| タイトル |
日 時 |
吉原大門事件帳3―雪見桜―(11)
だが小春は我に返り、慌てて首を横に振った。
「駄目よ。――やっぱり駄目!」
源次郎と話すといつもこうだ。彦左衛門を差し置き、どうして源次郎と結ばれよう。溺れる者は藁をも掴むとはこのことか。
再び歩みだすと、腕を思いきり掴まれた。
「そうはいかぬのだ。今は大事な時。前川様の願いを裏切ったとなれば、俺が謀反者と思われかねない。例え屋敷に閉じ込めてでも、俺はお前を妻にする」
「そのような勝手なこと!」
小春が抗おうとしても、源次郎は決して離さず小春を抱き寄せた。
「お前は俺のも...
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2009/07/03 13:07 |
吉原大門事件帳3―雪見桜―(10)
最期の一歩を強く踏みしめて突っ込むと、土削る音と共に草履の鼻緒が切れた。体勢が崩れつつも、虚無僧の一撃を交わすと錫杖が彦左衛門の肩先を掠めた。うまく懐に入り込んだ彦左衛門の十手が深編み笠を裂き、顔が半分が見えると、虚無僧は慌てて隠しながら後方に下がる。
「逃すか!」
銀次が追うが闇に消える姿は早い。
彦左衛門は片手に切れた草履と持ち、痛めた首をさすった。
「銀次、佐助を探せ。必ず近くでうろうろしているはずだ」
彦左衛門はそう言い残して闇の中へ消えていく。
「それと佐助の家か...
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2009/07/02 15:49 |
吉原大門事件帳3―雪見桜―(9)
すでに夜も遅くなってのことである。
真っ暗闇に満月の光がさしこんで提灯がいらないほどになってきた。
彦左衛門は小春と会うことに未練を感じながら築地あたりをうろうろしている。
佐助は逃げる様子もなく、普段どおりの生活をしているようだ。
白をきるつもりなのか、それとも本当に白なのか。
頭巾を被ったのが佐助なら、これで事件は解決に向かっていくだろう。
彦左衛門が橋を渡りかけた時、銀次が追いついて隣に並んだ。
「旦那のおっしゃるとおりでした。過去の雛菊、評判いいですね...
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2009/06/26 15:56 |
吉原大門事件帳3―雪見桜―(8)
暮れ六つ、三五八飯屋でのことである。
小久保彦左衛門が暖簾をくぐるなり、「ほら来た」と店の女が笑って出迎えた。
「おう、そうだった。ツケと残りは前払いだな」
彦左衛門は小判を一枚渡すと、女が目を輝かせた。入口手前のいつもの席に座ろうとすると、「こちらへどうぞ」と二階に案内される。
「今日は上客扱いか」
亭主の三五八(さごはち)が店の奥でニヤニヤ笑って、こっそり小指を立てた。「コレが御待ちですぜ」
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2009/06/23 14:28 |
吉原大門事件帳3―雪見桜―(7)
広範は過去を振りかえり、自責の念にかられた。
「魚八3代目にお松を養子にするように話したのは私なのです。お松の生家は貧しいうえ急に子が増えて、口減らしまでする始末でした。お松は目がはっきりして、とても可愛らしかったものですから、きちんと育てられる方にお願いしたのです。
いつも一緒に遊んでいた佐助などは嫁にするのだと息巻いておりましたよ」
「佐助もご存知ですか!」
広範は目を閉じ、ゆっくり頷いた。
「当然です。お松とは佐助は幼馴染でした。
だが今頃何をしているやら。寺を出るまで彼...
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2009/06/19 14:02 |
吉原大門事件帳3―雪見桜―(6)
「父は魚八の三代目でしたが子ができず、お松を養女にしておりました。
けれど先妻が亡くなり、私は後妻の娘として家に迎えられました。母はお松の目が嫌いだと。大きい目で睨まれている。目付きが悪いと……。お松は耐えきれずに吉原に逃げこんだのでございます」
「みすみす地獄に落ちることもなかろうに……」
「そうなのです。せめて詠唱寺で静かに暮らしてほしかったのに、何故だか未だにわかりません」
「……詠唱寺」
彦左衛門は痛めた首に手をあて、しばらく考えていた。
「俺も行こう。女一人で弔うのも難だ...
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2009/06/17 14:36 |
吉原大門事件帳3―雪見桜―(5)
銀次はがっちり拳を握った。
「旦那、あっしの勘が当たりましたね!」
彦左衛門は頷き、首の痣を指差した。
「ここだ。紐は吊るされているのだから首の痕はやや斜めになるはず。それが真横なのは引っ張る紐と体がほぼ同じ位置、低い位置で絞められている。しかも首を絞めたのに、首のまわりは綺麗なままで傷痕がない。
傷がなければ首の骨を折って即死ということだが、半尺の高さで苦しまずに逝けるか疑問だな。
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2009/06/15 14:30 |
吉原大門事件帳3―雪見桜―(4)
山吹楼は安さが売りの下位遊廓である。
女郎にはここが最期の砦で、山吹楼から追い出されると遊女は生きる術を失ってしまう。ゆえにみな必死である。客の応対も良く、遊女は手厚くもてなしてくれるし、料金次第で、初会や返しなど体面上のことで、実際は三回合わずとも手っ取り早く夫婦の契りを交わすことができる。
便利な面もあるが、逆に客との揉め事も多く、事が起きれば女郎が無事なわけがない。法を犯して打ち首か、または自殺や他殺にしても、結末が幸せに辿りつくことなどない。
そういうことに慣れてしまったの...
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2009/06/11 15:46 |
吉原大門事件帳V―雪見桜―(3)
小久保彦左衛門は山吹楼から呼び出しを受けた。
「殺しではないんですが。でも一応足を運んでいただかないと」
どうも銀次の気風が悪い。
いつもならば彦左衛門のぼやきにポンポンと答えが返ってくる。
それがしどろもどろだ。これでは面白味もない。天下りの身で、しかも小春がいないとくればお勤めに張合いなど出るはずもなく。
「分かった」
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2009/06/08 14:44 |
吉原大門事件帳V―雪見桜―(2)
それから十日ほど経つが、小春は姿を現さなかった。
忙しいのだろうが、こうもぷっつり糸が切れると、顔を重ね会わせていただけにじょじょに不安は募るもの。
彦左衛門はついに痺れを切らし、わざわざ長屋を訪ねたが、帰った気配がないのはいつものことだ。
諦めきれずにもうすこし繰り出して置屋で聞いてみると、仕事にはちゃんと出ているという。
深川の芸者なのに贔屓で吉原に出入りしている身だから、吉原でなくても仕事もあるだろうが、まさか十日も大門を通らぬこともあるまい。
気に食わぬことがあって...
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2009/06/05 10:52 |
吉原大門事件帳V―雪見桜―(1)
ここしばらくの風を感じていると、冬は終わったかのようだった。
梅や桃の花は終わり、いよいよ桜が盛ろうとしている。
吉原の仲ノ町通りも凍えた日々から解放され、人通りが増えてきたころ。
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2009/06/04 11:49 |
終着駅(6/end)
「お前は本当にジン、なのか?」
フリードはジョスターの眉間に銃口を押しあて、大笑いした。
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2009/05/29 15:54 |
終着駅(5)
「それとも何かね。君は言いがかりをつけて私を犯人に仕立て上げるつもりかね?
ジンは戦争で亡くなった。ただそれだけのことだろう?」
老人ながら凄みを効かせた言葉だったが、フリードはびくともせず笑った。
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2009/05/28 16:01 |
終着駅(4)
なぜなら遺品の髪留めによってフリードはジョスターが首謀者であると確信したからだ。心のままに従うならここで拳銃を引き抜くところだ。
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2009/05/26 15:55 |
手作り生キャラメルー!
すごい〜
え?Σ(゜ロ゜ノ)ノこんなに簡単に出来るものなの?
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2009/05/23 12:11 |
終着駅(3)
フリードは周囲を見回した。
この鉄道はリーガル家所有の鉱山を発掘するのためのものであるため、客のほとんどは手前にある街で降りてしまった。わずかに残る客は別荘の関係者ぐらいで、汽車はほぼ無人に近かった。
時間がなかったことが悔やまれる。本来ならもっと前に汽車に乗っていなければならなかったのだ。けれど計画は必ずや成功させてみせよう。
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2009/05/22 15:31 |
終着駅(2)
声の出ぬ小娘など別荘に捨て置けば良い。手の者に監視させ、ゆくゆくは捨て駒として嫁ぎにいかせるのが常套手段。あるいはこのまま自分の部下に嫁がせ、完全に支配下におくか。
ジョスターはそれほど冷酷な男である。絶望的な未来にジュリアが死を望めば、常に左脇にぶら下げている銃で撃つ。決して躊躇わないだろう。
住み慣れた屋敷を離れることは辛かった。別荘行きに反対したが、メイドのルーニーの通訳で周りの賛同を得ることは難しい。
これも運命なのかとジュリアが唇を噛締めると、ルーニーが手を添え...
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2009/05/20 15:27 |
終着駅。(1)
少女は流れる窓の外の景色を見ていた。
汽車の煙と夜の帳に隠され星ひとつ見えないが、それでもいい。
この男と目を合わすくらいなら、闇の中に隠れている希望を探すほうがずっと良かったのだ。
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2009/05/18 14:14 |
連休中の作品。
今年のGWは12日間も ありました。お金はないし、長いだけで暇ひま〜
ならば普段やりたくてもできなかったこと。
しかも初挑戦なことしてみよう
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2009/05/11 13:45 |
踏切に咲く蒲公英。(10/END)
どんな冗談?
これは冗談ごとではすまされないよ?
じゃ、これは現実?
瑞江にとっての現実はただひとつ。
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2009/04/13 15:46 |
踏切に咲く蒲公英。(9)
繁華街から脇道に入ると急に静かになった。細く長い坂道はいつしか緑で覆われ、日蔭に時折鳴くカラスが不気味。
歩幅の広い豊についていくのがやっとだが、瑞江はムキになって追っていた。
「ねぇ、蒲公英が証明してくれるってどういうこと?
琢己はどこにいっちゃったのよ?」
大勢の人が見守る踏切で琢己が現れ、豊の言動はおかしいと全否定してほしかった。
なのに琢己は消えた。
踏切が開いた時、反対側で琢己が待っていることを期待したが、見つけることはできなかった。
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2009/04/10 15:05 |
踏切に咲く蒲公英。(8)
今まで頑固に距離を置いていた瑞江が、琢己に気持ちを伝えたくなったのだ。
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2009/04/08 15:50 |
踏切に咲く蒲公英。(7)
もう一度琢己に電話をかけてみた。けれど出たのは鈴木豊だった。
「どうして電話にあなたが出るの?
ふざけてないで琢己に代わってよ」
「ふざける? どっちが! 君がかけてきたんだろ?」
豊の怒りは本物で、瑞江は戸惑うばかりだ。
「じゃ、彼があなたの携帯をこっそり使ってるってことなの?」
「訳の分からないことをいう女だな……切るぞ」
「ちょっと待って!
今、この番号で琢己と話してたの。嘘じゃない。証拠に何日も前の履歴だってあるもん」
「だけど、この10分、携帯はずっとポケット...
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2009/04/07 15:56 |
踏切に咲く蒲公英。(6)
「もうこの道しか残ってないぞ」
「方向としては間違ってないと思うの」
それでも家がみつからない。
いやだ。
どんどん琢己が遠ざかっていく。
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2009/04/02 15:51 |
踏切に咲く蒲公英。(5)
春らしさの消えた曇り空の日曜日。
新しく買った春物のワンピースで鳥肌が立つ。けど、まずは可愛いのが優先。
これもすべて計画のため。
ランクアップした瑞江を見てもらいたいの。
借りたCDとお土産のケーキを持って急ごう。
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2009/04/01 12:00 |
踏切に咲く蒲公英。(4)
真夜中を過ぎると琢己から電話がかかってくる。
気がつくと瑞江ばかりが喋ってる。たいした話題も無いけど、話している間だけ琢己と繋がっていられる。だから今日あったことを端から話すよ。
ノリが悪いのも空回りも先刻承知。
少しでも琢己の知りたい。ただそれだけなの。
琢己は自分のこと、何も話してくれないから。
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2009/03/18 11:51 |
踏切に咲く蒲公英。(3)
瑞江は踏切の反対側にいる琢己をじっと見つめていた。
最近、踏切に大勢いても簡単に琢己を見つけられる。慣れというか、自然と周囲を見渡すクセがついてしまったよう。
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2009/03/13 14:42 |
初恋の人からの手紙。
黒いコーヒーに浮かぶミルクの河。
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2009/03/12 14:30 |
踏切に咲く蒲公英。(2)
踏切に行けば、必ず琢己がいる。
それが普通になっていたことを自覚したのは、一ヶ月あとのことだった。
いつのまにか“そいつ”は琢己へと進化していた。
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2009/03/09 13:53 |
新聞紙袋の作り方
ちょっと前に流行った新聞紙で作る紙袋。エコですよ〜
どこのサイトにも作り方が載っていないので、
自分なりに作り、まとめてみました。
写真まで載せられなかったのが残念。(後日編集して載せましょうかね)
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2009/03/04 14:48 |