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help リーダーに追加 RSS 誓い。(END.3/3)

<<   作成日時 : 2008/09/26 15:59   >>

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 正雪は苦しみながら「クゥ」と何度も呼んだ。

 闇と光がひとつになることなど、成立しない。光が闇を打ち消すか、闇が光を弱めるかのどちらかだ。一度身体に入りこんだ闇は正雪を弱らせていく。仰向けに倒れたまま、暗闇しかない視界の先を見つめていた。

 張り裂けそうな想いの苦しさに胸に手をあてがう。

 やがてそれは涙となってこぼれた。

 どうしようもない苦しさと切なさが心を貫くたび、このまま泣き伏して、二度と立ち直れなくなりそうだった。現実の世界に戻れなかった父の荒れ狂う闇の心が正雪を支配しようとしていた。

『会イタイ…帰リタイ……ドウシテ俺ガ……ダメ…マモレナイ……ユラ…ムスコ………シメイ…』

 ――使命の裏で父さんは苦しんでた。
 父さんだって……生まれてくる僕と、母さんを置き去りにすることを望んでなかった。

 ……お母さん。

 母の声が聞こえたような気がした。

『泣いたって何も解決しないわよ! さぁ動く動く!』

 不思議と笑みが出た。

「父さんを救えるのは僕しかいないんだ……。僕しか」

 正雪はいつの日か本物の父に会う。そう心に決めた。

 ――その日まで、頑張る。

「難しい呪文で封印しても、いつか誰かに解かれるかもしれない。でも僕を思う父さんの気持ちは僕にしか解けない」

 まだ生まれぬ我が子に未来を託した父の想いを正雪は受けとめた。


 * * * 

 いくらかの罪悪感があっても、クゥは振りかえらない。

「封印を解くと言ったのはお前だろ。俺は力を手に入れる」

 なぜなら求めていた力は白い灰の中で、小さな太陽のように輝いている。

 快感に身をまかせながら、クゥは手を伸ばしその珠を握った。

「!」 

 触れることはできなかった。実体のないものを掴むことはできないのだ。


「元来、光とはそういうものだ。目には見えても触れることはできない」

 後方から正雪の声がした。

 しかも先ほどとは違って苦しみの欠片もない声だ。

 クゥは驚き、振りかえって姿を捜した。

 ずっしりと重くなった右腕を正雪が掴んだ。だがその手は死人ように固くつめたい。

「どういう事だ? 力を受け継ぐのは当然この俺だろうが!?」

「――これは父と息子の絆なんだ」

「絆? 笑わせるな。

 偉そうなことを言って、あの親父がどれだけ家族に迷惑をかけたと思う。

 貧乏が裕福になれたのも、母親の面倒も、みんな俺がやったんだ。

 あいつはただ、家の中で酒を飲んで妄言を吐いていただけだ!

 ――そんな奴と俺に絆なんて必要ねぇ」

 役たたずの父が、また息子の邪魔をするというのか。

 息子と名乗ることも恥ずかしい。ダメ親の名誉を回復するために使徒になったわけではない。ただ、この力を発揮できる場を求めていただけだ。

「ブランド家が闇の力に負けた時、僕の父はルオンに頼んだ。
 来るべき新しいユラのために、力を封印してほしいって。だからこの封印は父が僕に残した遺産だ。
 ――そしてルオンは使徒をやめ、ユラへの忠誠と共にその能力を封印した」

「忠誠?」

「僕が現れる前に、クゥが闇に忠誠を誓ってしまったら、どうなる?
 クゥは今まで誰にも従わず生きてきた。でもブランド家はユラと永遠の契りをした一族。永遠に闇の使徒に狙われづづける運命だ。
 だから無力な息子を守るために、誰にも従わない力をクゥに植えつけた。それがお父さんの真心だ」

「忠誠の力はブランド家の宝ものだよ」

「……馬鹿な奴だ」

 正雪は胸に手をあてた。小さく時を刻んでいたはずの懐中時計の針が不規則に動いていた。今にも止まりそうだ。正雪の手足の先から心臓に向かって次第に冷たくなっていくのが分かる。

 残された時間はもうない。

『誓え。されば願いは叶う。僕は支配するつもりはない。ただ信じているよ、君が僕の使徒であることを……』

 クゥは数歩さがって警戒した。

 いつものような子供の話し方にも違和感を感じる。



「!――お前、誰だ。ガキじゃねぇな。」

 いつの間にか別人になっていた少年は軽く微笑みをみせた。



『また、会えたね』




 次の瞬間、正雪の身体がぐらりと倒れて動かなくなった。

「……っ」

 半開きになった口から、黒い液がドロドロと溢れだし、床でうねりはじめた。

 黒い液が床を埋め尽くすと、壁をのぼり天井を塞いでいく。

「やばいな。囲まれる」

 クゥが揺り起こすと、正雪が目を瞬いた。

「おまえのゲロなんだろ? お前が何とかしろよ!」

 正雪は力なくクゥを掴んだが、とても動ける状態ではないようだ。

 正雪を守るのは、自分しかいない。四方を黒く囲まれて、密閉された室内も闇が濃くなって息もできなくなってくる。

「わかったよ」

 クゥは首をぼきぼき鳴らして、少し微笑んだ。

 子供の寝顔を愛らしいと思ったのは、これが初めてだった。

「仕方ねェなぁ、ユラ殿のご指名とあらば」
   
 正雪を片手で軽く抱えあげ、右手で光の粒を掴んだ。

「ブランドの名にかけて」

 感触はないが、分かる。
 

 それは暖かい。
 父が残した想いと、誓い。

 
 黄金の光が指の隙間から漏れ出した。
 ひまわり畑で見たあの太陽のような強い光が広がっていった。




「守ってやるよ」


 
***おわり***

時間ないよ、限界。


 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
お久しぶりです。
アクションが少し弱めな気がするけど、内面の描写がいいですねー。
少年の葛藤と成長は絵になります。


火群
2008/10/15 01:56
わーい、火群さんがキター!お元気そうで何よりです。
こちらはまだのろのろやってますよ。
ユラも幸先よく復活したのはいいけど、頭がでアクションまで辿り着けずギブ。もっとサラッと仕上げられれば、読むのも楽になるでしょうに。また書く気が失せてしまいそう。
sora
2008/10/16 09:34

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