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運転手は逃げようとしたが、誰かがズボンの尻を引っ張っている。 恐る恐る後を向くと、占い師が投げた鋼鉄の筮竹が、服と車を刺し貫いていたのだ。 慌ててズボンを脱ぎ、パンツ一丁で道路に飛び出した。 占い師は薄布を取って立ち、その全貌を現した。 恐ろしく不気味な占い師が登場するかと思いきや、コンビニのエプロンをした高校生が現れた。 長めの茶髪をゴムで小さくまとめ、右手にリュックを持っている。 「すまん。バイト抜け出してきたんでな」 軽快な足取りで運転手の脱いだズボンから財布を抜き取り、札束を数えはじめた。 今までの重苦しさはなんであったのかと思うほど、現金を手にした占い師は楽しそうだ。 「まいどあり♪」 「ガキ! 騙しやがったな?」 『騙すもなにも、そこの怪物は本物。サナギになる前だ。食欲旺盛だぞ。 それに占いは――凶と出た。』 運転手はビクリとして、交差点を見ると半泣きになった。 怪物が案外早いスピードで一直線に近づいてくる。なのに腰が抜けてしまって足がしどろもどろになるばかりだ。 「あひぃ!」 『安心しろ。お前は運がいい。財布の残りの十萬で守ってやろう』 鋼鉄の筮竹が東西南北に4本突き刺さると芋虫は大人しく動きを止めた。その間に占い師はリュックを降ろし、なにやら着替えはじめた。 羽織袴はすべて黒い。手に木刀をもつと、時代を超えて現れた武士のようだ。 とりあえず、コンビニのバイト生や占い師よりは頼りになりそうだ。 「お前、占い師じゃないのか?」 「占いは趣味。本職は辻番だ」 足音ひとつ立てず辻の中に入ると、手の木刀で巨大な芋虫を突付く。 その時、ひゅうと風が吹いた。 たなびく羽織袴のはるか先。転がる葉の行く末を追うと突き当たりであったはずのT字路にもうひとつの道が現れた。若葉の茂った緑のトンネルだ。 『道を誤ったなら山に戻れ。 新たな道を求めるなら、緑で安らぐがいい。 だが人に手だしすることは許さない』 ぶよぶよと一定のリズムで動いていた芋虫が動きを止めた。 『下がれ』 辻番の願いも虚しく、芋虫は運転手に向かって前進した。 『――これ以上人と関わるなら、斬る』 一拍おいて、辻番の剣が空を斬った。 木刀は黒い日本刀に変化した。 その時、芋虫はぐつぐつと煮え、形を女に変えてきた。 それは相当な美女だった。長い黒髪に麗しいまつげを震わせながら、十二単の着物姿で現れた。 女は運転手の前で一枚づつ上掛けを脱ぎながら近づいてきた。 するりするりと絹ずれの音がするたび、女は妖艶な気を放出していた。最期に襦袢一枚になると、下の裸体が透けて見えるようだ。弾けそうな乳房と細いくびれで身体をくねらせて男を誘っている。 運転手が夢を見ているように近寄ってきた。 『辻に入るな――下がれ!』 辻番の言葉に反応した時には女の手が届く一歩手前だった。 女は一度も声を発しなかったのに興奮したのか、ついに咆哮した。 義ぃぃぃぃ! 辻番は舌打ちして、宙を舞った。 『辻斬り……御免!』 ひらり、黒い刃が星の光を反射した。 女の背中から水風船を割ったように液体が散らばった。 まともにかぶってしまった辻番は、すっかりテンションを下げたまま、のろのろとマイリュックからタオルを出して拭く。 「あぅぅ。またこれかよ……」 「あの、ありがとうございました。 でも……なんでこんな仕事をしているんですか?」 すっかり弱気になってしまった運転手は辻番の顔を覗き込んで、寒気がした。 聞いてはいけないことを聞いてしまったようだ。 「物の怪を追っている」 そそくさとコンビニ店員の恰好に着替えて、辻番は闇に消えていった。 「畜生、今回も壷装束じゃなかった……」 暗闇から呟きが漏れてきた。 ***おわり*** |
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| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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題名から時代物かと思ったら、伝奇系ですね。 |
火群 2008/11/08 08:38 |
あ、火群さんリボーン!さっそくGOだわ。 |
sora 2008/11/10 09:50 |
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