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花屋の片隅、忘れられた緑の鉢植え。 伸びた葉の数だけ待ちつづけた日々も、いつかきっと報われる日がくる。 遅咲きの小さく白い花。 芽吹く蕾に未来をたくわえながら 君と出会うのを待っている。 「ごめん。悪気はなかった」 そう言われても、白いバッグは元に戻らない。 元彼との別れ際で、散々殴りつけた武器になっただけに多少の傷はあったが、ちょっと気に入っていたバッグだったのだ。 ミカはその男を睨みつけようとしたが、あまりに純朴でお人よしな空気にのみこまれてしまった。 「し……仕方ないわね」 ミカの許しを得て、男が照れ笑いすると、キラキラした目が一転して糸のような垂れ目になった。 驚いた。 甘え上手な、人を蕩かす笑みにミカは動転していた。その瞬間から目の前の災厄な存在が、彼と呼べるようになっていた。 それが恋というなら、そう呼んでもいい。 風が引き寄せた運命は初対面のはずなのに、何となく見覚えがあるように思えてくる。 「俺、リュージ。お前はミカ?」 「え?」 ミカは本当に知合いかと思ってあらゆる記憶のページを探った。 だがリュージは細かいところに気がついていて、バッグに付いたキーホルダーの文字を読んで指差していた。 「美香恵。でもミカって馴れ馴れしく呼ばないでよ?」 「じゃ、美香恵」 「呼び捨てすんなボケっ。」 ミカが切れそうな勢いで怒り爆発させると、リュージは笑っていた。 「鉢を返すついでだ。その怒りをちゃんとぶつけて言わないと!」 彼はミカの手首をぐっと握り、花屋へと直行した。 実は女子高で男に免疫力の少ないミカは、手をつなぐのが久しぶりだった。 手を引っ張る彼の背中が大きく頼もしくみえた。 けれどミカは意識しないでおこうを思った。 リュージは気付くことなく真面目な顔で花屋だけを見ていたのだ。 「花屋が鉢を転がしとくなんてだらしないと思わないか? バッグは汚れるし。そういうの許せないんだ」 「でも、花屋さんっていうより、風のせいでしょ?」 店の中は高級感あふれていた。花はアートのように並び、女子高生がいるだけで場違いだ。 そこにリュージはズカズカとミカを引っ張っていく。 「いいんだ。言うべきことはちゃんと言わなきゃダメだ――さぁ!」 「――さぁ?」 リュージはミカの背中をドンと押した。 「え?」 ――あたしが言うのカイ? 「いらっしゃいませ――花束ですか?」 若い女の店員が現れた。 「あの…えっと……」 しどろもどろになるミカにリュージが後方からトドメをさした。 「だらしなく鉢を放っ散らかしとくから、バックが台無しじゃねぇか! どうしてくれんだヨ」 店員はアッと指を口にあてて、平謝りした。 「……あ、いいんです。この人の言ったことは気にしないでください」 リュージがまだ言いたいことはたくさんあるようなので、咄嗟にミカは店の脇においてある植木鉢を指した。 「アタシ、あれでいいです! あれ下さい!」 誰にも買ってもらえなかった二百円の鉢。毎日通学途中に見ていたから思い出した。 こうして通学路で毎日視線に入っていた鉢はミカのものとなった。 ただし、それはお土産にとして。 なぜならそこがリュージの家で、あれはお姉さん。 風に揺れるレースのカーテン。 アタシの部屋に小さくて白い花が咲いたよ。 それにほら、リュージの声がきこえる。 ***おわり*** |
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| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
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| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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ちょっとロマンチック |
はる 2008/10/09 13:28 |
前半が調子悪くて挫折するかと思いました(T_T)でもこぉしてコメいただけると嬉しい〜O(≧∇≦)o |
sora 2008/10/13 00:38 |
これは甘酸っぱいですね。 |
火群 2008/11/14 03:23 |
火群さん。こんばんわ。いつも遅くまでたいへんですね〜ありがとうございます。 |
sora 2008/11/14 14:32 |
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