| タイトル |
日 時 |
甘い危機
短編orショート。(HなR18。未成年の方、Hが嫌いな方はご遠慮ください)
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2007/10/10 01:02 |
恋愛とアクション(最終話) 旅立ち。
異人館の医務室は明るさを取り戻していた。
白い布で覆われた医療機器は姿を現し、新しく来た看護婦と吉田祥が談笑している。その隣では仲野伸吾が二匹の小猿と共に、診療用の空きベッドで昼寝をしている。
伸吾のライバルであったザックは、結局行方不明で、レインを守ると言っていたのに大事な時に裏切られて、伸吾は本気で怒っていた。
だが、それも季節が変わってしまえば、遠い日の出来事だ。
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2007/03/06 12:49 |
恋愛とアクション(91)大好きな場所で
決定打といえる三倍早い剣速で横一線に光の筋が走った。
「! ――だが、無駄な努力だ」
月影の身体に深く斜めに線が入った。だが、別に驚くことではない。いくらでも回復できるのだから。大量に出血した傷をに手を充てて癒そうとしている。
「!」
「無駄だ。繋がりは切れている。今のレインでは回復できるない。お前はただの男だ」
「美琴、早くしろ」
レインからの返事はない。その間にも緑の芝生は赤黒く染まり、月影は急速に弱っていった。息もできないほどに。
「力を……」
丈一郎は渾身の力で剣...
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2007/03/05 12:33 |
恋愛とアクション(90)キスして。
次の瞬間に緑の光は月影に衝撃波となって、襲いかかった。
「何?」
月影は至近距離で受けた衝撃波に中庭の芝生の上を転がり、レインも反対側に投げ出された。、急いで緑の光を放つ宝剣を見た。だが、もう光の残影はどこにもない。宝剣がもう一度光る気配もない。
きっと二度とデイビスには逢えないだろう。
それでもレインは悔いはなかった。
デイビスの部屋を残したいと駄々をこねた五年。帰ると信じていられたのは、デイビスがレインを呼んでいたからだ。あの心臓にはレインへの最後のメッセージが残されてい...
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2007/03/04 00:09 |
恋愛とアクション(89)奇跡―最後の会話―
突如沸き起こった確信に彼女の表情が激変した。
「そうだ。戦え、レイン。」
そして丈一郎の言葉に黙って頷いた。
――オレは癒者だ。この身を犠牲にしても人を救けたいと思う。だからレオンが死んだ時、自分の力不足を責めてばかりいた。自分が憎かったから、たくさん練習も積んできた。
それに敵を恨むこともできなかった。いくら悪い奴にも身内がいる。親しい人がいなくなる辛さは自分がよく知ってるから。だけど、全部を差し引いても。
「――オレはこんなにも、一人の人間を憎いと思ったことはない!否、お...
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2007/03/03 12:56 |
恋愛とアクション(88)目覚めの時
丈一郎がレインの腕を掴んだが、反応が鈍かった。話に引き込まれて、手が出せなくなっていたのだ。彼女は呆然として、頭の回路は停止寸前だ。
――こんな奴の話なんて、本当かどうか怪しいのに!
丈一郎が焦る空気を月影は読みとっていた。丈一郎がレインと知り合う前の話では、彼がいくら否定しても、何の重みもないことを知っているから、口出しは無駄だ。レインの心は月影の治める範囲内にある。泣くも笑うも月影の気分次第だ。
「デイビスはいい奴だったよ。馬鹿みたいに素直でお人よしだった。私と同じ細胞で出来てい...
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2007/03/02 13:58 |
恋愛とアクション(87)真実
レインは闘志を振るい起こして、宝剣を構え直した。
「まだ信じないの?」
「例え、オレの中にお前の血が流れようとも、オレの心はオレのもの。協力など絶対にしないから!」
そこにゆっくりと加賀丈一郎が吉田祥を連れて現れた。吉田は訳も分からないままに連れてこられて、ぎこちなく隅に身を寄せた。
月影は笑って出迎えた。
「遅かったな、加賀丈一郎、どんな策を練って来た? まぁどちらにしろ、美琴は僕のものだけどね」
月影がかるく「来い」と言っただけで、レインの足腰が揺らいだ。
「来いと言っ...
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2007/03/01 08:46 |
恋愛とアクション(86)七年越しの念願
見る間に月影の腹の穴が塞がり、殴った傷が消えていく。これが契約の繋がりの証だった。血の交換は確かにあったが、月影に手を貸したいと思った憶えは一度もない。だから契約は無効なはずだ。なのに何故繋がりが切れないのだろう。
「お前がデイビスを忘れない限り、力は私まで届く。無駄なことだ」
月影はゆっくりとレインの手を取った。
「私がこの時を何年かけて手に入れたと思う?実に七年だ。もう少し私の気持も理解してもらいたいものだ」
「七年も前から?」
「そうだ。七年前、何があったか憶えてる?――レオ...
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2007/02/28 06:47 |
恋愛とアクション(85)再び決戦の場へ
何をどうしてよいのか、全く分からないが、今二人でこうしている時間が限りなく幸せで、どうしようもない。
「行こう。レグが待ってる」
レインは灯台監視員の作業服を見つけだし、袖を何度も捲った。男物なので少し大きいが、重たい癒者の服よりはマシだ。そそくさと髪を結い、皮のグローブを手にはめる。臨戦態勢に入ったレインを丈一郎は嬉しそうに眺めた。闘志に満ちたレインを見るのが好きなのだ。
「ちょっと待った!」
丈一郎はレインを優しく抱きしめた。
「俺たちはひとつだ」
「うん」
レインの心...
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2007/02/27 00:10 |
恋愛とアクション(84)愛があるから
「ちょっと待って! 丈一郎は知らないだろうけど、契約って言っても普通の書面で交わす奴じゃないんだよ?」
「どんな契約でも、俺は別に怖くない。殺される訳じゃあるまいし」
丈一郎の態度は変わらなかった。覚悟はできていたのだ。それでレインが救われるのなら何だってできる。契約自体は別に難しいことではないが、問題はレインだ。落ちつきなく辺りを見まわしながら、じりじり後退している。
「俺はいつでも準備OKだ」
レインは半分目を潤ませながら、決断を下そうとした。だが何を話そうとも上ずってしまい、言...
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2007/02/25 17:53 |
恋愛とアクション(83)勝利への道すじ
月影は全く面白くなかった。冷静だった形相は次第に歪んで醜くなっていったが、瞳には勝利の笑みを浮かべた。
「加賀がいなければ何もかも分からず終いだっただろうに。まったくお前は邪魔な奴だ。仲間割れした姿をもう少し楽しみたかったのに。まぁいい。どの道、美琴は僕のものだ。おいで」
月影が「美琴」と優しく呼び寄せると、レインは咄嗟に自分の身体を押さえた。
「はやく来い」
呼ぶ声に自分の意志とは関係なく、腕や足が勝手に反応する。操り人形のように不自然に後退しそうになった。
レインは丈一郎の...
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2007/02/24 02:00 |
恋愛とアクション(82)信頼の瞳
「そんな事、知るか!」
丈一郎は毒づいてレインに手を添えた。だらりと萎えた体からはまだ熱が伝わってくる。レグフォンはレインの耳元で優しく言った。
「ご主人、宝剣を私に貸していただけますか?」
「?」
「いくら努力しても、人には向き、不向きというものがあるもの。だから仲間が必要なのです。それにご主人はまだ若い、未来がある。これから癒者として歩む身を血で染める必要はありません。まして身内殺しなどもってのほか。
そのような行いは兄に手をかけた私が一番、その道に向いております」
レグフ...
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2007/02/23 12:51 |
恋愛とアクション(81)デイビスの正体
暗闇からぽっかりと白い顔だけが浮かんで見えた。蕩けるような優しい笑みには陽だまりのようなのんびりした空気が感じられる。ただ蒼い瞳だけは鋭くレインと丈一郎に向けられていた。
丈一郎の胸の中にいるレインだけが真実を知っているかのように、体を硬くして身を寄せてきた。自然と二人は身を寄せ合うような格好になりその男と向き合った。
「そして僕は契約者として、言いつけを守らない子には躾をしないといけないんだ」
その男は闇から抜け出るように中庭の中央に立った。そして人さし指をレインに向けた。
暗...
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2007/02/22 06:51 |
恋愛とアクション(80)労わりのキス
レインは知らずに涙を零した。
――そこに愛があるのに、もう触れられない。
気付いていないわけではなかった。あれは幻であって、あの笑みも偽物だということも分かっていた。それでもあの声でいつものように話しかけられたら、そうせずにはいられなかった。
求めるものに応えるのが癒者だ。それが契約した者なら尚更だ。自分の血がそうせずにはいられなくしている。目の前にある丈一郎との幸せが色あせて見える。
「……許して」
一番大切なものだと分かっているのに、それを自分で無くそうと手にかけてしまっ...
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2007/02/21 06:46 |
恋愛とアクション(79)逆境に負けない愛
丈一郎は首を横に振った。レグフォンの裏切られた気持ちには同情するが、納得がいかなかった。
「それが真実なら、俺の出番はないだろう。でも、もしそれが真実でないなら、お前はレインを見捨てたことになる」
レグフォンは針で刺されたような痛みを感じた。
「未練ですか?」
「違う。疑問だ」
丈一郎は中庭で棒のように立つレインを見つめた。
「疑問なんて何もありません。本当に好きな男のためなら、女はどうだって変わるものです」
「本当に好きな男のためなら、か」
丈一郎は皮肉めいた笑みでレイ...
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2007/02/18 16:00 |
恋愛とアクション(78)再会したのはいいけれど。
電話の声と口調には聞き覚えがあったが、誰であるかまでは分からなかった。俺がいない一週間にレインに何が起きたかは想像もつかない。浮ついた気持で他の男に手を出したか、それとも出されたか。どちらにしても俺にとって善い方向に転がることはない。焦燥感だけが心につのる。
丈一郎が異人館に到着し、何においても先に捜したのはレインの姿だ。リビングやレインの部屋を探しても見あたらなかった。まさか本陣に行ってしまったのだろうか。東寺琢磨ならレインの意志に関わらずやりかねないと思った。
「東寺はどこにいる?」...
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2007/02/16 12:41 |
恋愛とアクション(77)決意と裏腹に。
「そうか。ありがとう」
丈一郎はそう言って静かに携帯電話を閉じた。
まだ異人館に到着するのには半日かかる。列車の乗り継ぐこと三回、その間何回もレインに電話をかけたが、繋がることはなかった。
嫌な予感を感じて紫苑に連絡を取ったのだが、彼は部外者だ。建物の中で何が起こっているかまでは調べようもない。他に聞くあてもなく、帰途の足は速まった。あとは自分の目で確かめるしかない。
思いかえせばレインからの連絡がないなんてことは一度だってなかった。嫌なフリをしていても(本当に嫌な時でも)、俺の...
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2007/02/13 12:55 |
恋愛とアクション(76)過去と理由
「! 御婆様」
「美琴には悪かったと思ってる。でも、無事にお前を解放するには仕方のないこと。誰にも言わないでおくれよ」
丈一郎はただ首を横に振るばかりだ。
そんな祖母のやり方は決して納得いくものではない。加賀家を保つ為なら何をしてもいいとでもいうのか?
「御婆様。レインは俺のために血を流し、命を救ってくれました。なのに俺は……何も彼女にしてあげられませんでした。でもこれからは彼女を助けたい。支えてやりたいのです。それが償いでもあり、俺の正直な気持です」
祖母は多くの皺のなからこれ...
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2007/02/10 23:44 |
恋愛とアクション(75)加賀花江の告白-2-
「祖父の創った会社だからファイドに入れといったのはアタシだ。丈一郎、本当にすまない――実を言えば、お前をファイドに入社させた理由は、人質みたいなもんだった」
「人質? 私がですか?」
決して聞こえの良い台詞ではない。しかも自分にはそんな自覚はまったく無かった。
「お前には、今になっては謝ることしかできないね。あの時は加賀家がファイドに逆らわない証が必要だった。そうしなきゃ、加賀家は潰されてしまっていたことだろう。ファイドは加賀家の後継者を片っ端から襲撃した。お前の両親が事故でなくなったと...
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2007/02/09 13:11 |
恋愛とアクション(74)加賀花江の告白-1-
冬枯れの樹木たちに新芽が生えてきた。朝晩の寒さはまだ厳しいのに、春の兆しが喜ばしかった。
祖母、加賀花江は午後の日のあたる廊下で、庭木を眺めながら丈一郎を待っていた。
年齢は八十をこえている。月日に逆らえず足腰に多少の不自由はあるが、脳の衰えは微塵も感じさせなかった。
加賀の家で薬師として働いて六十余年。体力の限界を感じることは何度もあったが、満足な後継ぎもできないまま、ここまで来てしまった。ここ数年は特に死が身近なものであることを悟らずにはいられなかった。このままでは癒者たちを守...
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2007/02/09 13:02 |
恋愛とアクション(73)加賀家の秘密
ここは場所を説明するのが難しいほど、目印も何もない田舎だ。地平線は青い山脈で囲まれ、碌山と呼ばれる里山の麓に加賀の本家はある。
丈一郎が最後に加賀本家に来たのは祖父が亡くなった時以来で、もう何年もこの家の敷居を跨いでいなかった。簡素な十畳の和室で、幅の広い廊下の木材は長い年月で茶褐色になっており、萱葺きの屋根と共に懐かしい昔の匂いがする。障子からは暖かい光が差し込み、静けさだけがそこにある。
この家は百年前と同じ姿で、時が止まっているように思えた。
滞在して一週間がたっていたが、時...
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2007/02/07 23:30 |
恋愛とアクション(72)君は僕のもの。
押し退けられてデイビスは無言で乱れた黒髪を指でなおした。目先の獲物を取り逃がしたことに苛立ちを感じていた。せっかくのお遊びをもう少し続けていたかったのに、案外早く見抜かれたことが面白くなかったのだ。
「どうして分かった?」
その声は聞き慣れた優しい声ではない。下から響くような低い声だった。
レインは血の気が引いて顔が青くなっていくのが分かる。そのようすを、デイビスは笑って見ていた。
この目の前の男はデイビスと全く同じ姿形でありながら、別人であることを認めた。世の中に似ている人物...
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2007/02/04 17:17 |
恋愛とアクション(71)ひとりじゃない。
「なんで丈一郎のこと、知ってるの?」
いつも自分を信じてくれた人。デイビスはいつでも味方だった。大切にしていた懐かしい星の数ほどの思い出が浮かんでくる。全部が純粋で、汚れのないもののはずだった。少なくともレインはそう考えていた。
なのに今、それら全てに大地震が起きている。それとも五年のブランクが彼をそうさせたのだろうか。
心のなかで渦巻く疑惑は確信に変わっていった。それにレインにはそう信じるしか選択の余地はなかった。人間の本質はそう簡単に変わるものではないと。
五年前のデイビスは...
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2007/02/03 12:03 |
恋愛とアクション(70)結ばれる二人
レインは走って抱きついて、その胸に飛び込んで初めて実感できた。
いくつもの涙が筋となって頬を濡らした。声を上げて泣いたのは何年かぶりだった。自分でも思ってみないほど、ありのままの自分が堰をきったように溢れ出た。
――どんなにこの日を待ちわびたことか。
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2007/02/02 12:46 |
恋愛とアクション(69)待ち人、帰る。
真夜中の異人館で、レインは今日も眠れずにいた。
卿都にいる丈一郎と話がしたいのに、携帯電話が繋がらない。電話しても出かけているとか、手が放せないからとか、取り繕ったような言い訳をつけられて、代わってもらえない。明かに誰かの裏工作に思える。
想いはつのるばかりで、思わずため息も零れた。
素性からいって、加賀家が自分を受け入れてくれないのは承知の上だが、丈一郎だって電話ぐらいくれたら良いのにと思うと逆恨みしたくなる。薬を取りにいくだけなのに、どうしてそんなに遅いのかといらついたり、もし...
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2007/02/01 01:16 |
恋愛とアクション(68)レイン/希望の星
それからの琢磨は癒者としての指導にますます力を注いだ。美琴は琢磨に癒者としての行いの全てを叩き直されることとなった。琢磨が厳しい課題を出しても美琴はふてくされることもなく、真面目に取り組んでいた。それが琢磨に対する美琴の唯一できることだからだ。
戦闘能力と癒者としての資質の向上のために、戦闘時の力の使い方についてが当面の課題だった。今までは宝剣をレグフォンに力を送る道具として使っていたが、琢磨はそれを聞いて呆れるばかりだ。
「そんな事のためにあの剣を渡したつもりはない。いかに子猫だろうが...
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2007/01/27 22:20 |
恋愛とアクション(67)癒者の運命
レインは朝晩のトレーニングで出かける時以外はずっと異人館に篭りきりで、外出できないでいる。こっぴどくファイドにやられた手前、二度目が無いようにと周りの目は厳しく、迂闊に外に出られなくなってしまった。でも異人館に篭りきりなんて真っ平ごめんだ。どうせどこにいてもファイドは襲ってくる。異人館だろうが、外であろうが大した変わりはないではないかというのが本音だ。
レグフォンも伸吾も出かけて帰ってこないし、ザックは護衛兼見張りで遠目から様子を覗っている。どうせ琢磨に言われているのだろう。琢磨の気持ちは...
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2007/01/27 00:27 |
恋愛とアクション(66)契約
「いただきます!」
小賀音の勢い良い声と正反対に美琴は格段に大人しかった。しおらしく茶碗から小豆だけ除いて貯め込んでいた。
ザックは赤飯を珍しそうに見つめ、頬張った。
「何か、感じかわったよね?」
吉田祥にそう言われて、頬がほんのり赤くなってしまった。
「そんなに恥ずかしがるな。結局背格好が変わっても、中身が子供のままでは同じだ」
「もう子供じゃない!」
小豆の散弾が琢磨にかかると、苦笑いで赤飯のお代りを要求した。
「うっさい。キスしか知らない子供のくせに騒ぐな」
「琢...
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2007/01/23 12:49 |
恋愛とアクション(65)ザック再登場
「ザック?」
美琴はその言葉を聞いて三歩下がり、よろよろと手近な椅子に座り込んだ。格好こそ違うが、確かにその目に見覚えがある。酔っていたとはいえ、あの日のことは忘れられるはずがない。
「どうしたの?」
小賀音が興味ありありの顔で美琴の方を見るので、琢磨が小突いた。美琴はさらに琢磨を見てショックを受けた。琢磨は絶対何か知っている!
「琢磨、最低!」
ザックは会釈をしつつ琢磨を押し退け、座り込んだ美琴の前に立った。
「よろしく。しばらく貴方のガードが専任となりましょう」
その行...
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2007/01/21 12:57 |
恋愛とアクション(64)新しい仲間?
「美琴さん、色っぽくなったって思わない?」
噂好きの小賀音の言葉にレグフォンは黙って考えた。
痩せた筋肉質の身体が丸みを帯び女として成熟した。前は豹のように野性的だったのに、隠れていた女としての匂いが前面にでて、開きかけた薔薇のつぼみのように棘の危険さと未熟な麗しさが混在している。
「所詮未成年です」
レグフォンはあっさりと小賀音の質問を切り捨てた。
異人館の屋敷の主であるキムが入口に向かって手招きした。
「それと、明日から我が異人館に新しい仲間が増えることとなりました。良い...
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2007/01/20 11:31 |
恋愛とアクション(63)美琴と琢磨のかけひき
「本当? 信じていいの?」
「お前の薬を頼んだだけだ。そのまま加賀家に残るわけじゃない――それより、その格好は何だ?」
琢磨の質問に美琴は照れくさそうに、母との夢の話をした。
「そうか」
琢磨がにやりと笑って美琴の胸元の水晶を指差した。
「やはりその水晶は母親と何らかの繋がりを保っているんだ。だが美琴の能力不足で、今までは使いこなせなくてただの"お守り"だったわけか。その間向こうは長い間美琴を見守ることしかできなかったわけだ。それがこの一件で徐々に能力を増して、色々な現象が起きるよ...
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2007/01/20 00:44 |
恋愛とアクション(62)丈一郎を追って
大事な話があったのに!
「痛!」
立ちあがると、思いきりベッドの天井に頭をぶつけた。よろめいた机に手紙が置いてある。レインは嫌な予感を拭いきれないまま、かじりつくように読み漁った。
「卿都の加賀本家!? まだ何も話してないのに。それにすぐ帰るっていつ!」
美琴はしばらくうずくまったまま、動けなかった。思案の末、結論が出ると立ちあがった。
「ちゃんと話さなきゃ」
卿都の加賀家に行けば、丈一郎に会える。それだけの気持で美琴は行動した。
――今会わなきゃ。今しかないんだ。本陣...
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2007/01/18 20:20 |
恋愛とアクション(61)母の夢
夢を見ていた。だって目の前で母が笑っている。
幼い頃の写真がそのまま抜け出してきたかのように、変わらず若い母だった。
金色の緩やかにうねった髪を長く垂らし、愛くるしい瞳なのに、芯の通った眼差し。一見幼く見えるが、暖かな優しさを感じた。
自分とは似ても似つかないような素敵な母だ。艶やかな羽織の袖や裾に小鈴のついた、癒者独特の"式服"を身に纏い、可憐な容姿は天女のごとく男女の嫌いなく人々を魅了する。娘のレインでもそう思うのだから、嘘ではない。母には人を引きつける力がある。その不思議な力...
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2007/01/17 12:50 |
恋愛とアクション(60)切ない恋心
レインは軽い足取りで二階に駆けあがった。
今まで丈一郎と話す時間も無かったが、具合もすっかり良くなって快方に向かっている。琢磨は忙しそうだし、今夜なら丈一郎とゆっくりいられそうだ。
丈一郎の部屋の扉を叩いたが不在で、しばらく待つ事にした。
丈一郎の高級時計や携帯電話が置きっぱなしになっている。きっとすぐ帰ってくるだろう。
それにしてもこの部屋はビジネスホテルみたいに狭い。レインのよく日のあたる東向きの広すぎる部屋とは大違いだ。まるで誰かの嫌がらせみたい。異人館の部屋はまだある...
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2007/01/16 12:33 |
恋愛とアクション(59)小賀音の怖いもの
「琢磨さん。これ」
小賀音が指で差したのはバケツのなかに浮かぶ真黒の珠だった。
その珠は美琴が吐き出した時よりも血を吸っていた。豆つぶだった珠が腐りかけの果実のようにぶよぶよで、はちきれそうだ。
琢磨の鼻がぴくりと反応した。
「呪い珠って手があったわけか」
「呪い珠?」
小賀音はその言葉を聞き、さらにジリジリと後退した。東寺琢磨でさえ嫌悪感を露わにしている。癒者がそんなに恐れるものを美琴は呑まされていたのだ。
「こんなもの、いつ……」
東寺琢磨は悔しさのあまり拳を握り締...
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2007/01/15 12:50 |
恋愛とアクション(58)がまん、がまん!
琢磨は美琴を抱き起こし、汚れた口を優しく拭いた。その顔に苦しみの片鱗はもう感じられなかった。安らかで赤子のように愛くるしい。美琴のぼんやりとした瞳が開いた。
「頑張ったな。今助けてやる」
琢磨の手がそっと美琴の頬にかかり、少し上を向かせた。
「琢磨? 嫌だ。大丈夫だよ」
美琴が最後の抵抗と言わんばかりにかすかに首を横に振った。琢磨はため息をついて、一瞬丈一郎を睨んだ。
「彼はいない。だから俺を受け入れろ」
丈一郎が反論しようとしたその口を小賀音が急いで押さえ込んだ。
「!」...
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2007/01/14 12:58 |
恋愛とアクション(57)暖かい手
「飲ませるんだ。早くしろ!」
瓶を美琴の口元へ持っていったが、意識が朦朧としていて、とても薬が飲める状態ではなかった。仕方なく丈一郎が口移しで薬を飲ませたが、物凄く苦い水薬だった。一口含んだだけで、吐きそうになる。
美琴が薄く目を開けたが、その瞳には何も映っていない。
「美琴、しっかりしろ」
丈一郎が大声で名を呼んだ。
「……美琴じゃなくてレインだって」
うわ言のように頼りない言葉だが、弱々しく彼女は笑った。
「人が答えられないと思って。美琴って呼んで良いのは琢磨と小賀音だ...
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2007/01/13 14:06 |
恋愛とアクション(56)容態急変!
世の中どこでどう通じているのか分からないものだ。大河といえばファイドの反対派に巻き込みたかった人物の一人だ。丈一郎から関係が遠すぎて声をかけられなかったが、今後のことを考えると期待せずにはいられない。
あとは美琴が回復次第、さっそく行動に移りたい。チャンスはそう多くない。
「ちょっと聞いてもいい?」
「何だ?」
「レッドヒルの人はレインって呼ぶけど、僕たちは美琴さんっていうでしょ。加賀さんはどっちで呼ぶ?」
「は?」
「美琴? レイン?」
「どちらで呼んでも同じ人間だろ」
...
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2007/01/12 12:48 |
恋愛とアクション(55)内緒ばなし
こんにちは。Soraです。
先日ハリポタ七巻のタイトル発表になりましたね。中身通りのズバッとしたタイトルで、なかなかストレートでいいんじゃないでしょうか。タイトル名聞きたい? 言っちゃっていいの?
早く本でないかな。
うぅー読みたい。ロンとハーマイオニーは確実に熱くなってるでしょう。ジニーとハリーって結ばれそうにない気がする……
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2007/01/09 12:42 |
恋愛とアクション(54)その先は別れ道
こんばんは。Soraです。いよいよ正月気分も終わりですね。
明日から学校が始まり、いつも通りの生活が始まります。今年の正月こそは規則正しい生活を送ろうと思いましたが、結局グータラいてしまいました。
明日からは気合を入れて、頑張って参りましょう!
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2007/01/08 21:22 |
恋愛とアクション(53)無力
琢磨が戻ってきた。
「紹介が遅れてすみません。東寺琢磨と申します。私、彼女の師を兼ねております」
丈一郎は黙って会釈した。
「加賀さんは卿都のご出身で?」
「はい」
「もしかして御婆様は花江という名では?」
「はい。確かそんな感じの名でした」
「そうですか」
琢磨の連呼が微妙に変化した。
「そういうことですか――」
「どういうことです?」
「どういうことです?ってこちらが訊きたいぐらいですよ」
琢磨の語尾がやんわり上がり気味だ。
「貴方はファイドにいた。いわば私...
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2007/01/07 15:48 |
恋愛とアクション(52)東寺琢磨
異人館で、まず最初に出迎えてくれたのは、小猿の銀次だった。何日も主人を失って心細かったのか、丈一郎の背中を登り、腕に抱かれている主人を起こそうと躍起になって、はしゃいでいる。
玄関に入るなり、両腕を組んで仁王立ちした男が出迎えていた。
背は丈一郎と同じぐらいで、胸を張って堂々とした態度である。美琴や小賀音と同じクリーム色の髪を見れば、言われなくても癒者だと分かる。
「琢磨さん。連れてきました」
小賀音の言葉に琢磨は無言で頷くと、丈一郎の腕から黙って美琴を奪っていこうとする。
「...
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2007/01/06 13:21 |
恋愛とアクション(51)幸せな結末
うす暗い廊下の一番奥の扉から僅かに光が漏れていた。
丈一郎が隙間からそっと覗くと、男が一人おり、どうやら他に敵らしい人物は見当たらない。
情報が正しければここにレインがいるはずだ。この地下は社内でも限られた幹部しか知らない。ファイド内部でも極秘作戦に使用するための区域だからだ。
室内にいる男は丈一郎の知らない男だった。小柄な若い男は軽い癖毛で、美琴と同じクリーム色がふんわりとしていた。
あれがアルフォンスの言っていた応援に駆け付けた小賀音という男だろう。どう見てもひ弱で幼さが残...
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2007/01/05 23:31 |
恋愛とアクション(50)戻れない選択
「見つけた!」
隼人は牢屋の鍵を開け、満足そうに笑みを浮かべた。
「加賀丈一郎さんでしょ」
「あぁ?」
丈一郎が隼人の後を追うが、幼いのに足は意外に速く、あっという間に走り去ってしまったが、最後に念押しの声だけきこえた。
「約束は守ったからね!」
「いったい誰と約束したんだ?」
丈一郎は大声で叫んだ。
「白い髪のお姉さん」
丈一郎は息を呑んだ。レインだ。
「どこにいる!」
隼人の姿はすでに消えてどこにもなかった。丈一郎が追って階段を出ると、建物の外に女性が立ってい...
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2007/01/04 23:40 |
恋愛とアクション(49)丈一郎の理想
何日も前から、加賀丈一郎は月影によって拘留されていた。
場所はDNA研究施設の一角である。その地下に不審者を捕まえ、モルモットとして使う極秘の牢屋がある。そこは月影専用のブースで、全管理は月影にあることは下調べが済んでいたが、まさか自分がここに入るとは思ってもみなかった。このままでは行く末は廃人か、死体だ。
何日も替えていないワイシャツはくたくたになり、不快の極みだった。襟元は緩められ、手入れを欠かさなかった髪型も崩れていたが、だからといって心まで弛んでしまうことはない。丈一郎の緊張...
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2007/01/03 23:06 |
恋愛とアクション(48)女の本気
<<アンダーワールド観たよ>>
こんばんは。Soraです。
今日はアンダーワールドという洋画を1と2立て続けにDVD観ました。舞台は近未来。吸血鬼と狼人間の話です。
戦う女吸血鬼ってカッコ良かったです。でもファンタジーではありませんでした(>o<)けっこう派手に首が飛んだり真っ二つになったり、刺さったり……最近そういうのを見ていなかったので、ちょっと少年少女の前では観れないな、と。
“2”の方では絡みもあり、「お母さんあれ何してるの?」と子供に聞かれそうになり、動揺して早送りし...
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2006/12/31 00:02 |
恋愛とアクション(47)隼人と大河は希望の光
「条件?」
「俺の相棒が厄介な病でな。癒者なら何とかなるかもしれん」
「その人物を助けろって? あんた何者だよ」
虎のような刺青の男の顔に光が当たると、その頬にも縞模様がついていた。短髪ですこし毛が立っているところも、野心に燃えてぎらつく目もやはり虎みたいに思えた。
「俺の名は大河。月影の上司みたいなもんさ。もっとも皆はタイガーって呼ぶがな」
レインは少し笑い、大河を見て伸吾を思い出した。伸吾の明るい性格とは対照的だが、同じような空気を感じたからだろう。好戦的で嘘をつけない不器用な...
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2006/12/29 23:48 |
恋愛とアクション(46)夢と現実
黒い霧の彼方に丈一郎がいた。
ずっと会いたかった。海辺で別れたのが遠い日に感じる。
あの時、喧嘩別れをした自分の愚かさをレインは悔やんだ。
丈一郎は自分がファイドに捕まることを見越していたのだろう。あれほどファイドに近づくなと言われたのに、自分は忠告を無視した。
――ごめん、丈一郎。
そう言葉で伝えたかったのに、口は動いても言葉が出てこなかった。腹話術の人形のようにパクパク口が動くのに、声にならない。
丈一郎は悪戯っぽい笑みで、ポケットに片手を突っ込んでいる。
「さよ...
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2006/12/28 00:08 |
恋愛とアクション(45)虹色の宝剣
虹色の珠のついた、青く透明な刃の宝剣はレインがレグフォンに預けたものだ。
宝珠は対になっており、一つは剣に、もうひとつはレグフォンの左肩に仕込まれている。それがレグフォンとの主従関係を象徴するものになっている。
レインは剣を強く握って、全精神力でレグフォンの回復と強化を想い、その虹色の珠に祈りを捧げた。珠は鮮やかに色を変えながらおびただしく光を放ち、同時にレグフォンは苦しそうに左肩を抑えた。滝のように膨大な新しい力を必死に受け止めていたのだ。
それはレインが床に倒れ伏すまで続いた。...
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2006/12/23 22:12 |
恋愛とアクション(44)レグがいれば大丈夫
「レグ!」
レインはその名を呼ぶことができて、はじめて失った希望を取り戻した。正気に戻って、月影を退けた。
宝剣を手にしたレグフォンは月影の指からでる黒い糸をことごとく切り離し、月影を後退させることに成功した。ようやく自由を得たレインを伸吾の元に運ぶ。
「ご主人、もう大丈夫ですよ」
レグフォンがレインに優しく呼びかけると、レインの青ざめていた顔に少し赤みが戻った。身体は冷水からでた直後のようにがくがくと震えていた。
親や姉妹もなく、温もりを知らずに育ったレインが、まして男の皮を...
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2006/12/22 12:43 |
恋愛とアクション(43)偽りの服従
月影の出す糸は細いがしっかりと固く、容易に斬れない。伸吾の爪は鉄板をも切り裂く威力があるが、細かい動きについていくのは不利だ。それが月影の思うが侭に動くとなればなおさらである。伸吾が動きを封じられて床に転がるまでそう時間はかからなかった。
「伸吾!」
起き上がって近づこうとするレインの四肢にも黒い糸は絡まった。どうしても自由に動けないことに悔しくて涙が出そうだった。伸吾を助けたいのに、刃物のひとつも持っていない。
辺りを見まわしても、どれも役にたちそうな物がない。目についたのは床に転...
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2006/12/21 22:01 |
恋愛とアクション(42)蜘蛛と野獣
仲野伸吾はザックと別れ、林田医院に戻ろうとしていた。
浴衣に下駄といえばなんとも風流で、たおやかな雰囲気だ。普段の伸吾なら、大らかで大雑把な感じが人に好まれる。
しかし、今日の伸吾は別人だった。その顔には鬼気とした緊迫感がある。何よりも急いでいたのだ。
彼は浴衣をめくり上げて、一気に加速した。
「うがああああああああああああああああああああああああ!!」
その速さは超人的だ。異人館通りの斜面は登りがきつく、自転車で上れないほどだが、その斜面を伸吾はスピードを落とすことなく、下...
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2006/12/19 12:49 |
恋愛とアクション(41)奪えないもの
「いい匂いだ。お前の全てを食べ尽くしたい。血も皮もとろけるように甘い。だが、まずはその身体と契約だ。私を裏切れないようにな」
笑った月影を見て、背筋が凍る想いだった。美琴の使ったナイフで月影は自分の腕を傷つけ、血が滴り落ちた。そして重くて冷たい体が圧し掛かり、美琴は頭を鷲づかみにされて床に押し付けられた。避けようとしたのに、月影の動きは美琴以上に速かった。
「飲め」
月影が無理矢理血まみれの腕を上から押し付けた。美琴が吐き出そうとするので、月影は面白がって美琴の鼻を押さえた。
「――...
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2006/12/17 23:43 |
恋愛とアクション(40)運命のはじまりの日
「やめろ!」
レイン――美琴は拒絶した。
自分は美琴じゃない。
その想いと裏腹に母が自分を呼ぶ声が聞こえた。
記憶の美琴は八歳だった。美琴にとって母は何よりの自慢。緩やかに捻れた髪が光を通して神々しく輝いている。父はその隣で何よりも母を大事に守っていた。美琴は父が好きだった。そして父に何度も同じ質問した。「一番好きな人は?」
本当は自分だと言ってもらいたかったのに、答えはいつも母だった。でも美琴は嬉しかった。だって本当に母は美しくて憧れる。抱きつくといい匂いがした。暖かくて、...
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2006/12/16 00:05 |
恋愛とアクション(39)血と名前
月影は遠くからレインの様子を満足そうに眺めていた。音もなく背後に廻り、包み込むように抱きしめた。
「お前のように才能に恵まれた娘にくらべれば、デイビスなど蟻以下に意味のない。お前の血はすばらしい。解毒作用、回復効果。どの癒者よりも速効性が高い。デイビスの名には、お前が食いつく餌の価値しかない」
「オレを新薬の材料にするつもりか? それともモルモット扱いか?」
レインの問いに月影は関心を示さなかった。
「私のものになれ、と言ったろう?」
ふいにレインは背筋がぞくりとした。
月影の...
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2006/12/14 08:37 |
恋愛とアクション(38)師恩
薄れる意識のなかで、もしこの毒が解毒できなかったのなら、自分は死ぬかもしれないと覚悟した。
すべての毒が無効になるかどうかはなんて誰にも分からない。今までの試みはたまたま成功しただけで、何の立証もないのだ。死なないまでも副作用がでるかもしれないし、後遺症だって残るかもしれない。
毒に臆して自分が先生を見捨てたい気持がないわけでもない。でも先生が死んでしまったら、自分の残りの人生は後悔しか残らない。そんな人生、意味があるのだろうか。尊い先生に恩を返さない、恩知らずな身勝手な生き方はできな...
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2006/12/13 08:01 |
恋愛とアクション(37)毒
「会わせてあげても良いんですよ」
「――素直に言う事をきけば、か」
月影は薄い唇を三日月のようにして静かに微笑んだ。そして二本の薬瓶を手の中で回しながら、レインの出方を伺っている。
「馬鹿じゃないの?」
レインは冷めた目つきで月影を見た。
「一応聞いたまでです。一本目は麻薬、アナドセラチン。高梁に渡した先日の物より効果を挙げましたから、一度打てば病み付きでしょうね」
「じゃあ奪いとって、お前に飲ませるってのは、どう?」
レインが構えを取ると、月影は薄笑いした。
「二本目が何...
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2006/12/12 12:43 |
恋愛とアクション(36)ファイドではなく?
「月影」
レインは鳥肌がたった。月影の声もまた、冷たかった。愛想笑いの微笑みも、冷酷で何を考えているか見当もつかない。
一見普通の大人のようだが、尋常ではない。それは月影の身体からにじみ出る殺気のせいだろう。
月影と視線が合うと、全てを覗かれたような気がした。瞳が怪しく輝いて、身動きが取れなくなる自分を、レインは奮立たせた。
「何の用だ」
月影はすぐには答えなかった。
「――そう、加賀丈一郎を拘束しておきましたよ。何かと邪魔をされるのでね。加賀は貴方のことを話そうとしないんで...
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2006/12/11 12:18 |
恋愛とアクション(35)飛んで火に入る〜
雨雲が割れて、朝日が差し込んでくると小鳥たちが飛び立っていく。
レインは今日も走っていた。
いつものマラソンコースに林田医院も含まれていて、夜勤明けの林田医師と一緒に朝食を取るのが日課になりつつある。林田夫人はいつも優しく出迎えてくれて、まるで家族のように「おかえり。ご飯できてるわよ」と言ってくれる。
レインの部屋もあった。医院の三階にある林田邸の一部を借りて、事務所や休憩室に使用している。ここなら異人館のキムに聞かれたくないような話を自由にできるからだ。
家庭の暖かさを知らな...
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2006/12/10 13:04 |
恋愛とアクション(34)日常
レインは近頃、窮屈な生活を送っている。
まず、ちゃんと学校に通っている。一分の狂いもないレグフォンの定刻通りの送り迎えと、彼が認めた同年代の目付け役が(本来は護衛役なのだが)クラスに転入してきたせいだ。
今までは学校を行くふりをして、レッドヒルの下町で自由にやっていたレインである。テストの点さえ良ければ履修済みにするように、教師と裏取引していたのに、それが今回のことでレグフォンにばれてしまったのだ。
嘘の罰として夜の護身術の鍛錬に追加がでた。一日二回、しかも早朝である。いつもの朝寝...
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2006/12/10 00:00 |
恋愛とアクション(33)絆
敵を倒してもレグフォンは厳しい表情のままだった。
宝剣が光を失うのと同じく、レグフォンはすべての力を失いつつあった。
主人が何日もかけて宝剣に力を封じ込めたのに、思わぬ敵に力を開放してしまったことに唸らざるを得なかった。左腕の筋肉にかかった負担はあまりに大きかった。悲鳴をあげている肩。貫かれた腹からの出血で、めまいもする。
あまりの苦しみに思わず片膝を地についた。
しかしやらなければならないことがある。歪む視界を気力で立て直し、再び立ちあがる。
――ファイドに大事なこの命、獲...
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2006/12/08 13:20 |
恋愛とアクション(32)輪廻
レグフォンの体はたちまち傷だらけになった。一度絡まれば肌は赤く腫れ上がり、血が滲んでくる。
「痛!」
体の比較的柔らかい内腿や脇腹の部分が激しく痛んだ。
貫通した。左手で無造作に掴むとその枝を握り潰す。その間にもぐいぐいと身体を締め上げ、雑巾を絞ったかのように、全体から血が滲みでた。
レグフォンは冷静に剣を抜く作業を続けた。その間にも出血はひどくなり、くらりと意識が遠くなった。
――この男は、もはや人間ではない。ファイドはまた過ちを繰り返した。
憎むべきはファイド。そしてフ...
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2006/12/07 13:44 |
恋愛とアクション(31)レグvs大男
大男は再び小さく笑うと両腕を前に突き出した。武器は何も持っておらず、拳で戦うかまえでもない。両手を地面につけると何度も深く深呼吸して息を吐き出した。たちまち湿っぽい腐葉土のような臭いが辺りをつつんだ。
レグフォンはしかめっ面で、小走りに飛び上がった。小鳥が飛び立つように簡単に大空に舞う。大男の上空数メートルで剣を振りかざした。相手は二メートルの巨体だ。体重差がありすぎるので、全体重をかけていくしかない。ぶ厚い筋肉は鎧のように固そうだ。
おきあがった大男の額めがけて宝剣を振り下ろそうとし...
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2006/12/06 08:38 |
恋愛とアクション(30)レグフォン構える
黒服の彼――レグフォンは車でレインより先に林田医院に到着し、伸吾のかわりに護衛をする予定だったが、実際は林田医院のかなり手前で車を停めなければならなかった。
吉田祥の住む古アパートの前を通った時、ファイドの高梁を見かけたのだ。気になって尾行すると林田医院の手前にファイドがいる。
このまま吉田が林田医院に行けば戦禍に突っ込むようなものだ。足止めかけなければならなかった。本当なら吉田を無視して、主人のために林田医院へ直行したい。だがここで吉田を見捨てるわけにいかないし、ここでファイドを叩け...
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2006/12/05 08:23 |
恋愛とアクション(29)事の始まりは吉田祥から
雨上がりの、久しぶりに爽快な朝だ。
吉田祥は大きく背伸びをすると、自転車のペダルを元気よく漕ぎ出した。
異人館通りを調子よく鼻歌まじりにペダルを漕いでいると、前方に水溜りを発見した。軽快に速度を保ちながら、水溜りを避ける。流れるようなハンドルさばきはある意味芸術的だ。
「おりゃっ」
歩道には水溜りが多かった。避ける数も次第に多くなる。慎重に蛇行運転でかわしてみた。
――単純だが面白い。水溜りに入ったらズボンが泥だらけ。それだけはお断りだ。
時には両足を蹴り上げて開脚状態で...
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2006/12/04 08:33 |
恋愛とアクション(28)ザックと伸吾
伸吾はザックの口からでた突飛もない質問に、答えられずにいた。女と言われて思い出すのは林田医院の看護婦の顔くらいだ。
「女って?」
「異人館に住む白い髪の女だ。いい匂いだった」
伸吾は閉口した。レインをそういった目で見た事もなかったからだ。伸吾の想像する女性像とは、いわゆる制服・巨乳・ミニスカートである。アルフォンスにしても、色気はあるが、彼女は強すぎる。女の可愛らしさを感じないのだ。
「"東の砦"があんな女に縛られるとはな」
ザックの言葉の意味を伸吾が全部理解するのは不可能だった...
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2006/12/03 12:20 |
恋愛とアクション(27)格闘家の血が騒ぐ
幾つかの朝と夜が過ぎ、そしてまた朝がやってくる。
夜も開けきらぬ早朝に、静けさを切り裂いて異人館の電話が鳴り響いた。ただいま深夜営業中の林田医院で、仲野伸吾からである。しかも馴れ馴れしく大声で、たいそう明るい声であった。
電話に出たレグフォンの声は寝起きとは思えないほど弛んだようすもなく、限りなく冷たかった。
「護衛を変わって欲しい?」
「いやぁ、近くで昔馴染みに出会っちまってよ。何とか頼む!」
伸吾の明るい声は耳元では抑えきれず、異人館に響き渡っている。
責務をまっとうす...
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2006/12/02 11:11 |
恋愛とアクション(26)再び林田医院。
その後、丈一郎からは何の連絡もない。
海で「もう会いたくない」と言ったのも真実だが、いざ音沙汰がないと少し不安だ。
新しく貰った時計にはGPSがついているので、丈一郎側からは常に美琴の位置を確認できる。だから向こうは焦る必要はないし、丈一郎のまわりに彼女候補はたくさんいる。もう自分を捜す必要もないのかもしれない。外れない時計は丈一郎がくれた愛の証になるはずだったのに、今ではいたずらに美琴を束縛する手錠のようだ。
丈一郎だって大人の男だ。割りきりは早い方だろう。そして美琴はレインに戻...
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2006/12/01 12:46 |
恋愛とアクション(25)企みの代償
丈一郎の不可解な行動で美琴は怒りのあまり、本当に頭の血管が切れるかと思った。
「それは母の形見――ていうか、返せ!」
奪った水晶を奪い返そうとのばした美琴の手の動きは早かった。彼の握った拳をこじ開け水晶を取り戻そうとしたが、それは頑として開かなかった。丈一郎は美琴の手を振り払い、三歩下がって間を置いた。
「形見? 毛嫌いしてたお前が?」
丈一郎は美琴が怒ろうが冷静だった。
彼が美琴の能力について知っていることは三つだけだ。ひとつはファイドが追う理由が”癒者”と名づく能力だという...
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2006/11/30 08:27 |
恋愛とアクション(24)丈一郎の企み
「我侭言いやがって! お前に効く薬が見つからないぜ。
――詳しい話は後で連絡がくるから、それまで待ってろよ。もっとも、お前の後ろ盾のキムに聞けば、俺の情報は必要ないかもな?」
皮肉っぽく丈一郎が煙草を海に投げ捨てた。
いやな予感というのは当たるものだ。美琴がファイドから素直に隠れると言うわけがない。それを承知で話したのだから、自分としても覚悟を決めなければならないだろう。美琴には異人館で大人しくしてもらい、その間に自分が何とか裏で手を回す。それには取引の材料が要る。ファイドが欲してい...
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2006/11/29 09:16 |
恋愛とアクション(23)決意
丈一郎はちらりとこちらを向いた。
「ただし、お前は異人館に篭ってろ。異人館のオーナーは面白くないだろうが、お前を保護してくれるのは、今のところあそこしかない。ファイドの現社長の目的はお前自身だ。その為ならどんな人物を使っても、お前を誘き出す」
美琴の瞳にいつもと違う煌きがあった。
「それはできない。みんなを守りたいんだ……何もしないで異人館に篭るなんてできないんだよ。もうこれ以上、ファイドに仲間を傷つけられたくない」
会話するほどに、二人の心の距離はどんどん遠くなっていく。数分前ま...
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2006/11/28 09:35 |
恋愛とアクション(22)迫る敵の影
つかの間の幸せを邪魔するのは、いつも携帯電話だ。二人を現実に引き戻すかのように、コールが鳴り響いている。
「何だよ!」
丈一郎が珍しく毒づいて、電話にでる。
できれば放っておきたかったが、相手に至急の用件を頼んでいたので出ないわけにもいかない。
「何?――あぁ。やはり。分かった。サンキュ」
数分にわたる電話が終わる頃には気持ちもクールダウンして、美琴はいつものレインに戻っていた。
聞かないようにしても、話の内容が気になる。それが敵のファイドのこととなれば尚更だ。
しばし...
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2006/11/27 12:28 |
恋愛とアクション(21)好きならば。
丈一郎の腕の中でレインが震えていた。
「?」
丈一郎が覗き込もうとするとレインがぴしゃりと言い放った。
「待って」
丈一郎は何も気付かない振りをした。そうしなければ、彼女はこの腕から逃げてしまうだろう。だが丈一郎の鼓動がどんどん早くなって、思わず抱きしめる腕に力を込もる。
レインの緊張が解けている。数分前までは肩先に触れるだけで手を払ったのに、今はあまりに無垢で無防備だった。丈一郎は彼女が自分の胸で泣く状況に戸惑わざるを得ない。特に酷い事を言ったわけでもないし、女というものはやは...
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2006/11/26 11:31 |
恋愛とアクション(20)喜びと悲しみ
丈一郎の懐は気持ち良い。背中が温かく、抜け出す気もなえてしまう。
「寒いかなと思って」
そう言いつつ、丈一郎はご機嫌でポケットから、新しい時計をだしてレインの腕にはめた。カチリと左にはまるが、外すところが見当たらない。
「――何これ?」
「チタン製でGPSに防水。完璧」
「でも外れないでしょ!」
丈一郎が笑って抱きしめた。
「もうお前は独りじゃない」
自然に出たその言葉がレインの心を溶かしてくれた。ふいに核心をついた台詞だった。
丈一郎はレインが先ほどまで怯えていたこ...
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2006/11/25 08:50 |
恋愛とアクション(19)二人の歩幅
暗さを増す浜辺に一人の男が現れた。身長百九十の逞しい彼がハーレーを乗りまわすのはかなり絵になる。分厚いゴーグルを外し、携帯電話で位置を検索したあと、周囲を見渡す。
誰かを捜しているようすだった。加賀丈一郎はレインを捜していた。
幸い白っぽい髪のおかげで、遠くからでも彼女を見つけることは簡単だった。だが砂地に倒れている姿を見て、丈一郎は気が動転した。そのまま砂浜へ乗り込んで駐車し、荒々しく手袋とヘルメットを砂地に放った。
丈一郎は急いで駆けつけた。彼が慌てている姿が珍しい。そして砂浜...
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2006/11/24 08:23 |
恋愛とアクション(18)海と空と暗闇の狭間で
レインは蘇る過去の記憶に混乱しながら、迫り来る現実と戦わなければならなかった。
だいぶ前の記憶だが、確かに思い出した。暗闇に光る蒼い瞳は思い出しただけで鳥肌が立つほど機械的で非情な眼差しだった。今欲望に身を委ねているザックの方がまだ人間らしさが残っているくらいだが、今はこの状況を早く乗りきらなければならない。
レインは目を瞑り、首に下げられた水晶を握りしめた。
――お願い。助けて!
自分がどうしようもない時、この水晶はいつも助けてくれる。できれば、丈一郎に寝込みを襲われた時の...
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2006/11/23 13:06 |
恋愛とアクション(17)夢うつつ
その時のことはよく覚えていない。
ふわふわと空に浮かんでいるような気分だったのに、突如翼を失い急降下した。大地に縛られ、重い何かに押しつけられて身動きが取れなかった。
不思議と暖かい重さだった。
レインには想像もつかない事態だった。喧嘩で殴られたり、組み合ったりして触られたことはある。だがザックの動きはそのどれとも違うものだ。
気がついたら柔らかなベッドの感触がした。
レインのしなやかに投げ出された肢体は鍛え上げられ、白く流線型で無駄がない。細い手首は掴まれて華奢で折れそう...
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2006/11/22 12:26 |
恋愛とアクション(16)マジやばい。
ザックはレインの両手首を掴んで床に押しつけ、仰向けになったレインの上に跨った。
「なぜ止めた?」
レインは答えられなかった。目がデイビスに似ているというだけで、一瞬でも戦意を喪失したなんて素人同然だ。
ザックの顔がレインによくよく近づいてきた。
レインは間近でザックの蒼い瞳を見ながら、別のことを考えていた。
同じ青い瞳で黒髪なのに、どうして目の前にいるのがデイビスでなくこんな男なのだろうか。五年も探しているのにデイビスからの連絡は一回もない。どんな理由があって、自分の前に姿を...
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2006/11/21 12:34 |
恋愛とアクション(15)溢れた想い
ザックは余裕で部屋のローチェストに寄りかかり、部屋に散らばる空き缶のひとつを踏み潰した。
「何だ? 酔ってるのか」
「痛〜」
レインが痺れた左腕を振ると、手首から腕時計がずり落ちて床で砕けた。
「こ…。こ…壊れた?」
震える声で時計を手にとったが、修理して直るような壊れ方ではない。
顔色がさっと青ざめて、酔いも一気に覚めた。
「ミスティの特注。丈一郎にいっぱい我侭いって買ってもらったのに!」
レインの目に怒りの炎が宿り、間髪入れずザックに向かっていった。
蹴りを含めて...
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2006/11/20 12:37 |
恋愛とアクション(14)ふい撃ち!
レッドヒルはレインにとって庭先のようなものだ。色んな場所に仲間がいて、みな良くしてくれる。田舎ならではの人の良い奴らばかりだ。
港の船宿の一部屋は大家が自由に使っていいと言われて、彼女の隠れ家のひとつになっている。普段はみな漁に出て、誰もいないこの場所は独りで過ごすには最適な場所だ。
部屋は古ぼけていて精彩がない。床板は少し歩くだけで軋む音がした。質素なベッドと背の低いチェストが置いてある簡素な場所だ。
夕闇せまる室内では、窓から入る夕日の明りだけが頼りだ。
レインはキムに異人...
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2006/11/19 10:27 |
恋愛とアクション(13)ターゲット・ロック
ザックはブルの話に差して関心もない様子で、つぶやいた。
「――昔の話はいい。仕事の話をしよう」
「ずいぶん急ぐな。それよりお前と"東の砦"のオレと組んで二人で、再び名をあげる方がいいんじゃねぇか?」
「別にそんな気はない。オレは南へ行くつもりだ」
「海の向こうへか。難しいな」
南も大陸には錦(にしき)という国があるが、現在はほとんど交易も交流もなく関係を絶っていた。錦の国の政策で、レッドヒル方面からきた人間は受け入れないのだ。唯一の東の砦の許可を得た者だけが入国を許可される。
「伸...
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2006/11/18 09:59 |
恋愛とアクション(12)暗雲到来
港に面した古い店は今日も賑わっていた。席は二十くらいの小さな店で、朝帰りの漁師たちがよく立ち寄る飲み屋だ。人情をそそる曲と軽快に乾杯するグラスの音、そして明るい笑い声が響いている。
ドアのベルが鳴って、列をなして客が入ってきた。
話しながら入ってきた五人は、どの顔も酒場に不似合いだった。淀んだ空気で酒場の明るい雰囲気が台無しになった。店内は静まり返って、どの顔も入口の方を向いた。
彼らはレッドヒルで有名な悪ズラ五人衆だ。
地方独特のなまりと、どれも栄養に事欠かないような体格の良さ...
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2006/11/17 12:38 |
恋愛とアクション(11)後釜狙い
「何か、良いところだったのに邪魔しちゃったみたい」
レインは最初、その青年が誰だか思いつかなかった。
「吉田祥ですよ」
レグフォンがレインに耳打ちして、やっと思い出した。
デイビスの代わりに異人館に住む医者だ。レインにしてみれば小憎らしい男である。この男が異人館に来るせいで、自分が苦しんでいるのだ。
レインは無意識に拳に力が入って、構えた脚で砂が鳴った。
それを見逃すレグフォンではない。即座に腕を取り、軽く捻りあげた。
「レグ。放して」
「なりません。ご主人が人の道から...
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2006/11/16 21:11 |
恋愛とアクション(10)最大の味方
肩に飛び乗った銀次が擦り寄ってきた。
レインは外に出たが、どこへ行くべきか迷ってしまった。
レインの足は人通りの多いレッドヒルの繁華街へ向いた。特に目的があるわけでもなく、海に浮かぶクラゲのように、ふらふらと街を漂うことしかできなかった。
携帯電話が数回鳴った。アルフォンスが心配しているらしい。だが、電話に出るのが億劫で、考えているうちに切れてしまいそうだった。
「出なくても良いです」
後から突如話しかけられて振りかえると、そこにレグフォンがいた。レインは目を丸くして呆然と立...
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2006/11/15 22:03 |
恋愛とアクション(9) 初恋?
レインは言葉に詰まってしまった。
林田医師の意見はもっともだ。理路整然としていて付け入る隙がない。
でも、レインにはデイビスが帰ってくるという確信があった。何の情報もなく理由も分からないが、直感でそう感じるのだ。
「デイビスより良い医者なんて、いません」
「ワシは何千という医者に会ってきた。確かにデイビス・ブライアンは腕の良い医者だった。――が、他にも名医と呼ばれる者はたくさんおる」
「……。」
「異人館には救急救命医でなくては。心配無用じゃ。吉田祥は見た目はパッとしないが、腕...
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2006/11/15 00:13 |
恋愛とアクション(8)レインの将来
レインが目覚めたのは昼近くだった。
林田医院の処置室で眠り込んで、寝過ごした事に気がついた時にはもう昼頃だった。慌てて林田医院の建物の三階にある住居スペースに駆け込んできた。
「先生?」
林田医師は夫人とダイニングテーブルで昼食をとろうとしていた時だった。
身長が低いうえ、背が丸まっている人が林田浩三である。齢七十を過ぎ、はげ頭の両脇に白髪が生えていた。未だ眼光は鋭く、衰えの気配はない。小さいが、年輪を感じさせる医師だ。
「相変わらずの朝寝坊じゃなぁ」
「お昼なんですから食べ...
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2006/11/14 12:18 |
恋愛とアクション(7)治療に来たのにィ。
浴衣の男、伸吾はレインにがぶり寄った。
「何? いきなり」
伸吾はレインの手を引いた。金色の猿は弱々しく呼吸をしている。レインは瞳を閉じると、そっと手を充てて、撫でた。
「ファイドの奴らの荷物の中にいたんだ。可愛くてよぉ」
伸吾はレインなら金太を救えるかもしれないと思った。だがレインは虚ろな瞳で撫で続けた。
「無理だよ。この子配列がいじられてる。きっとファイドのせいだ」
「配列?」
吉田祥は訝しがった。
「遺伝子の配列。伸吾、ごめん。猿じゃ並べ方がよく分からない」
その...
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2006/11/13 13:10 |
恋愛とアクション(6) 林田医院
レッドヒルのメインストリート「異人館通り」の中腹に林田医院がある。"闇医者"で、夜専門に開院する。唯一の看板も割れてしまって、知る人ぞ知る医院だ。
規模も小さく、建物も一般住宅とさして変わり無い。急患が多く、急性アルコール中毒や喧嘩で怪我をした患者がほとんどである。
夜勤のみで荒くれ患者が多いこの医院に勤めたい医者は皆無だが、万年求人募集の挙句、奇跡のようにふらりと現れた医者が吉田祥であった。
吉田祥はで、インテリ風の銀縁の眼鏡をかけても子供っぽい顔だ。瞳が大きく今の年齢より若く見ら...
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2006/11/12 17:09 |
恋愛とアクション(5) バトル決着
「コイツを縛っとけ。薬で動けないが、念の為だ」
高梁は乱れた髪を丁寧に直し、誇らしげに笑った。
今まで何回もこの女に振りまわされたが、やっと仕事が完遂できて爽快な気分だった。これで上司からの査定に響くこともないし、面子も立つ。
強腕な傭兵がレインの腹をサッカーボールを転がすかのように踏みつけ、蹴り上げた。ウエイトの無い身体が軽く宙を舞って、地を転がった。
薬が効いて酸素が身体に染み込まないのに、腹を蹴られては余計に苦しかった。額から脂汗が流れ落ちたが、決して顔には出したくない...
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2006/11/12 17:06 |
恋愛とアクション(4) 好きな人と戦えるの?
レインにとって丈一郎は本来敵側なのだから、ここで現れても仕方のないことだ。それに丈一郎がファイドに再就職する気ならば、本気で戦うだろう。
レインは黙って構えた。覚悟はできている。
厄介な敵である。身長は百九十センチの、惚れ惚れするような体格と、鍛えられた筋肉には無駄がない。
最初に攻めたのは丈一郎だった。レインが攻撃するには懐が深くて届きにくい。丈一郎のパンチは重く、受け止めただけで腕が痺れた。相手を倒そうという気合も入っている。だがレインが身軽に動くので、当たりは少ないし、以前よ...
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2006/11/11 16:17 |
恋愛とアクション(3) 脱出
レインはひとりエントランスを進む。丈一郎の暖かい感覚から離れて、外の空気はぐっと冷えていた。シャツ一枚で鳥肌がたった。とりあえず携帯で連絡を取る。
「レグ。遅くにすまない――今からお願いできる? ん、高梁。――大丈夫」
妙な予感がして通話を切った。ホールの前を過ぎ、非常階段まで走ったが、前方に多くの気配と足音を感じた。
「ここは駄目か」
来た道を戻ろうすると、その先に怪しげな人影が見えた。すぐに数人の男が駆け寄ってきた。あの男たちはおそらく高梁が雇った傭兵だろう。夜明けも近いという...
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2006/11/11 15:31 |
恋愛とアクション(2) ほのかな恋心
オリオンが西の果てに沈み、静かな夜に終わりが近づいた頃。レッドヒルから西に進むと大都市ジャッジスがある。大企業の工場や高層ビルが立ち並ぶ。眠らない街のマンションの一角でのことだ。
ここに加賀丈一郎が住んでいる。
一人で暮らすには広すぎるマンションは、三十過ぎの男所帯のわりに、手が行き届いていた。整頓された部屋は、彼の几帳面さを象徴している。
体格はロダンの彫刻のように逞しい。百九十センチの背丈と筋肉質の厚い胸板が男らしさを強調していた。太い眉と強い意志の眼差しが見る者を釘付けにしてし...
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2006/11/10 08:28 |
恋愛とアクション(1)異人館の彼女
その街の名はレッドヒルという。
朝日が水平線の彼方から顔を出し、大漁船と共にレッドヒルに辿りつく頃、丘も海も赤く照らしだされる。ここは湾と丘に挟まれた小さな街である。湾の裾野には古びた港町があり、その賑わいは異人館通りを中心に一直線に頂上まで続いていた。そして通りの名の通り、丘の頂きに「異人館」と呼ばれた大きな洋館がある。
異人館からは全てを見渡すことができる。昔ここは城だったので、建物もひときわ派手で、レッドヒルでは浮いた存在だ。
白い大理石の巨大な正八角形の建物で、八つの角...
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2006/11/09 00:09 |